韓氏意拳での拳は外来、突発の危険から生命を守るための現象になります。
これは生物が生まれながらにして持っている天有の資質です。
ここで重要なのは生命と環境の呼応についてです。
站樁のように止まっている時も、歩法のように進行している時も環境に応じることに変わりありません。
では環境とはなんでしょうか。
社会の中では人は規則に従います。
社会的な関係、社会的な距離、社会のルール、調整された人工物に守られ、適度な安全を得ています。
しかし自然の環境にはそれらの担保がありません。
森に一度入れば、周囲は他の生物の気配、天候などの直接の影響、原生の地面に応じて注意、警戒を向ける必然があります。
原初の生命の姿は生まれ出でたその時からこの呼応を得て、現れます。
例えば技撃樁や三角歩で身が転換するのは、身体を回そうと操作しているのではなく、環境の変化(危険、圧迫感、緊迫感etc.)に呼応しようとする生命現象です。
危ないものが直撃しそうになれば、警戒が深くなり、接近に応じて身は翻ります。
本来ある働きはただあれば良く、操作、意識、分析せずとも活きます。
ここを信じられるか、ここに回帰できるかは稽古の大切なテーマです。